はじめに
昨今、OpenAIの音声AIが大きな話題となっていますが、弊社ではAzure環境を採用しているため、同等の機能が実現できるのか興味を持ちました。そこで、Azure音声AIとRAG(Retrieval Augmented Generation)の連携に着目し、実際にシステムを構築してみました。本記事では、そのプロセスと得られた知見、そして今後の改善点について詳しくご紹介します。
こんな方におすすめ
- Azure利用企業の技術担当者
自社システムにAzureサービスを導入している方。 - 音声AIに興味がある方
どこから手をつければ良いか迷っている方。 - OpenAIの音声AIに関心はあるが、Azure環境での利用が前提の方
会社の方針でAzureしか使えない場合の参考として。
プロジェクト開始の背景
なぜAzure音声AIに挑戦したのか?
- 社内環境との整合性
Azureを中心にシステムを構築しており、同環境内で音声AIの可能性を探ることが最適と判断。 - 機能の類似性に着目
「OpenAI音声AI」に匹敵する機能がAzureにも存在するとの情報を受け、実際に試してみることにしました。
プロジェクト準備
必要な環境は整っている?
- Azure契約
既にAzure契約済みで、すぐに実験を開始できる状態でした。 - 複数リージョンの活用
米国やスウェーデンなど、利用可能なリージョンが複数存在。 - 基本的な開発環境
プログラミングやデプロイのための環境もすでに確保していました。
実装プロセス:具体的なステップ
Step 1: RAGシステムの準備
- ツールの活用
「Azure on your data」を使用し、社内のPDFやWord文書を簡単にアップロード。 - インデックス作成とセキュリティ設定
文書から検索用のインデックスを作成し、必要なセキュリティ設定もスムーズに完了。
Step 2: 音声AIの環境構築
- AI Hubからのデプロイ
「gpt-4o-realtime-preview」をワンクリックでデプロイ。直感的な操作で環境が整いました。
Step 3: サンプルプロジェクトで検証
- GitHubプロジェクトの利用
公開されている「aisearch-openai-rag-audio」を元に、READMEの手順に沿って環境構築。基本的な会話デモを無事に実現しました。
実際の課題と学び
1. 会話の精度について
- 期待と現実のギャップ
たとえば、「旅行の話をして」というリクエストに対して、思いがけず「料理の話」を返すなど、トピックがずれるケースが見受けられました。
2. 会話の流れの維持
- 話題の転換が難しい
一度話題が外れてしまうと、元のテーマに戻すのが困難。ユーザーとの自然な対話には、さらなる工夫が必要です。
3. コストの問題
- 短期間で予算上限に達する
実験環境では1時間程度の利用でもコストがかさむため、本番運用に際してはコスト管理の対策が不可欠です。
今後の展望
できたこと
- 基本デモの成功
システム全体が連携し、基本的な会話が成立するデモを完成。初期段階としては感動すべき成果です。
改善・拡張の方向性
- 会話精度の向上
ユーザーの意図により忠実な返答ができるよう、チューニングとアルゴリズムの改善を検討中。 - 新機能の追加
ファンクションコーリングなどの最新技術を取り入れ、システムの幅を広げる計画です。 - コスト効率の改善
実運用時における費用対効果を高めるため、最適化策を模索しています。
まとめ
Azure音声AIとRAGの組み合わせは、まだ発展途上ながらも非常に大きな可能性を秘めています。今回の実験でいくつかの課題が明らかになりましたが、これらは今後の改良に向けた貴重な学びとなりました。Azure環境での音声AI導入を検討している方々にとって、本レポートが参考となり、実際のプロジェクトの一助となれば幸いです。
※本レポートは2024年12月時点での体験記録です。Azureの機能は日々進化しているため、最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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