はじめに
ベイズ統計は、既存の知識(事前分布)と新たなデータ(尤度)を統合して確率を更新する柔軟な手法です。特に不確実性の高い状況下での意思決定や予測に適しており、来客数の予測モデルなどに応用されています。
本記事では、ベイズ統計の基本概念や実装プロセス、応用上のポイントを具体例とともに解説します。
ベイズ統計の基本概念
- 事前分布(Prior)と事後分布(Posterior)
既に持っている知識(過去のデータ)を事前分布として設定し、新たなデータ(天候、イベント情報など)を用いて確率を更新します。 - ベイズの定理
数式で表すと次のようになります:


実装プロセスの詳細な流れ
- 事前分布の設定
過去数年の来客データから、来客数の平均やばらつきを推定し、初期の確率分布を設定します。 - 尤度の計算
当日の天候、イベント、プロモーションなど、来客数に影響を与える因子を数値化し、各シナリオの尤度を計算します。 - 事後分布の更新
マルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法などを用いて、新たなデータが得られるたびに事前分布を更新し、来客予測の信頼性を高めます。
実装例と具体的なコード(疑似コード)
# 例:PyMC3を用いたベイズ推定の疑似コード
import pymc3 as pm
import numpy as np
# 過去の来客データ(例)
data = np.array([120, 135, 150, 145, 160])
with pm.Model() as model:
# 事前分布の設定(平均と標準偏差)
mu = pm.Normal('mu', mu=130, sigma=10)
sigma = pm.HalfNormal('sigma', sigma=10)
# 尤度の定義:各日の来客数は正規分布に従うと仮定
obs = pm.Normal('obs', mu=mu, sigma=sigma, observed=data)
# MCMCによるサンプリング
trace = pm.sample(2000, tune=1000, cores=1, random_seed=42)
# 事後分布の結果をプロット(例)
pm.plot_trace(trace)
- ポイント:
- 初期設定(事前分布)の選び方が結果に大きく影響するため、過去データや専門家の知見を取り入れることが大切です。
- サンプリング結果の収束状況やトレースプロットを確認し、モデルの妥当性を検証します。
- Google Colabではライブラリの関係上実施が難しいので、AnacondaやVS Codeを利用するようにしましょう。
応用事例と注意点
応用例:
- 小売店や飲食店の来客予測
- イベントの集客数予測
- ウェブサイトのアクセス予測
注意点:
- 事前分布の設定には主観が入るため、複数の事前分布を試して結果の安定性を確認することが推奨されます。
- モデルの更新はデータ量や変動要因により複雑になるため、計算リソースや実装の効率も考慮する必要があります。
まとめ
ベイズ統計は、既存の知見と新たなデータを組み合わせることで、柔軟かつ動的な予測モデルを構築できる強力な手法です。初学者は、まずはシンプルなモデルから始め、事前分布の選定やMCMCの収束状況の確認など、実装上の注意点を学びながら徐々に応用範囲を広げていくと良いでしょう。
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