はじめに
現代のビジネス環境では、社内の膨大なドキュメントやナレッジを効率的に活用することが求められています。そこで、私はAzure上でRAG(Retrieval Augmented Generation)システムを用いた社内向けAIアシスタントの構築に挑戦しました。この記事では、そのプロジェクトの背景、直面した課題、解決策、そして得られた教訓を詳しく解説します。
結論
Azure単体のサービスだけでRAGシステムを完結させるのは難しい状況です。実際の開発では、Azureで全体のデータを安全に管理しつつ、LangChainなどの補助ツールを組み合わせることで、実用性の高いAIアシスタントを実現しています。今後のサービス改善に期待しつつ、現時点では「できる範囲で実用的なシステムを作る」というアプローチが最適といえます。
対象読者とプロジェクトのきっかけ
対象読者
- 社内ドキュメントやデータを活用してAIアシスタントの構築に挑戦したい方
社内情報の検索性向上や業務効率化に関心がある方に特におすすめです。 - Azureを利用してセキュアなシステム構築を目指す方
クラウド環境でのセキュリティ管理やデータ連携に興味がある技術者向けです。
プロジェクトのきっかけ
「社内の資料をAIで効率的に検索・活用できたら便利だよね!」という何気ない会話から、RAGシステムを活用したAIアシスタントの構築プロジェクトがスタートしました。セキュリティ面の配慮から、まずはAzureの各サービスを活用したトライアル環境で実験を開始しています。
直面した課題とその解決策
プロジェクトを進める中で、いくつかの壁にぶつかりました。以下に、主な課題とその解決策をまとめます。
1. 「精度が低い?」という問題
- 課題:
文書をそのままシステムに投入すると、意図した回答が得られず、精度に不満が出るケースがありました。 - 解決策:
文書内容をQ&A形式に再構築することで、回答の精度を大幅に向上させることに成功しました。チャンクの切り方も、明確に〇〇のキーワードで区切るや、QAごとにファイルを分けるなどを試していました。
2. 「回答の正確性が不明確」な問題
- 課題:
AIが出す回答に対して「本当に正しいのか?」という疑念が生じ、信頼性が問われる状況でした。 - 解決策:
回答に根拠となる資料やソース情報を併記する機能を追加し、ユーザーが裏付けを確認できるようにしました。
3. 「同じ言葉の意味が曖昧」な問題
- 課題:
「コード」という単語一つを取っても、プログラムのコードなのか商品コードなのかと、意味の解釈に混乱が生じました。 - 解決策:
重要な用語について、明確な定義や説明をまとめた用語辞書を作成。これにより、用語ごとの意味を統一し、誤解を減らす工夫を行いました。
4. 「もっと適したツールはないか?」という探求
- 課題:
Azureの機能だけではなく、他のツールやサービスも試してみたくなる状況に直面しました。 - 解決策:
他のツールを検証した結果、文書の区切りや処理の柔軟性が向上するツールを見出し、最適な組み合わせを模索しました。
5. 「完璧を目指す欲望」との戦い
- 課題:
ユーザが完全無欠なAIシステムを目指すあまり、実用性よりも理想を追求しがちでした。 - 解決策:
実用性を重視し、80%程度の正解率でも「十分使える」と判断。段階的な改善を続けるアプローチに切り替えました。
開発を通して得た教訓
- 試行錯誤が鍵:
完璧なAIシステムは存在しません。小さな改善の積み重ねと実際の運用を通じた学びが、最終的な実用性につながります。 - 柔軟なツールの組み合わせ:
Azureのセキュリティやデータ管理の強みを活かしつつ、LangChainなどの他ツールとの連携がシステム全体のパフォーマンス向上に大きく寄与します。 - 段階的な導入のすすめ:
いきなり完璧を目指すのではなく、まずは「できるところから」始め、実用性を確認しながらシステムを拡張することが成功の秘訣です。
まとめ
今回のプロジェクトでは、AzureのサービスだけではRAGシステムの構築に限界があることが明らかになりました。しかし、他のツールを組み合わせることで、実用性の高い社内向けAIアシスタントを実現できました。
これからAI導入を検討する企業や技術者の皆さんには、まずは小さな成功体験を積むこと、そして試行錯誤を恐れずに柔軟なアプローチで挑戦してみることをお勧めします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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