はじめに
「社内に散在するマニュアルや過去の資料を、対話AIで瞬時に探し出せるようにしたい」——多くの企業が、生成AIを活用したこのような業務改革を望んでいます。その鍵となる技術が**RAG(検索拡張生成)**です。RAGは、自社の独自データをAIに連携させることで、事実に基づいた正確な回答を生成させ、社内ナレッジマネジメントや顧客対応を劇的に効率化します。
しかし、「RAGの構築はAI専門家でないと難しい」という課題がありました。現在では、その課題を解決するノーコード・ローコードのRAG構築サービスが次々と登場しています。本記事では、非エンジニアの方でも安心して導入を検討できるよう、主要なサービスをタイプ別に分類し、その特徴と選び方のポイントを徹底解説します。
RAG構築サービスの3つのタイプ
RAG構築サービスは、提供形態によって大きく3つのタイプに分けられます。自社のITリテラシーや導入目的に合わせて、どのタイプが最適かを見極めることが成功の第一歩です。
タイプ | ① 主要クラウドプラットフォーム | ② ノーコード/ローコード特化型ツール | ③ 導入支援・SIerサービス |
概要 | Google, AWS, Microsoftが提供する大規模で高機能な基盤。 | 特定の用途(チャットボット等)に特化し、GUIで直感的に構築できる。 | 専門家がデータ準備からシステム構築、運用までを一括で代行。 |
向いている企業 | 既に特定のクラウドを利用しており、IT部門が主導で開発を進められる企業。 | 事業部門が主導で、迅速に特定のAIツール(例: 社内FAQボット)を導入したい企業。 | AI専門家が社内におらず、データ整備やシステム連携も含めて丸ごと任せたい企業。 |
メリット | 高いセキュリティと拡張性。 | 開発スピードが速く、低コストで始めやすい。 | 手間がかからず、自社の要件に合わせた最適なシステムが手に入る。 |
注意点 | ある程度の専門知識が必要。 | 機能の拡張性に制限がある場合も。 | 初期費用やコンサル費用が比較的高額になる傾向。 |
Google スプレッドシートにエクスポート
おすすめRAG構築サービス・ツール7選
上記の3タイプに基づき、2025年現在、特に注目すべきサービス・ツールを7つご紹介します。
【タイプ①】主要クラウドプラットフォーム
セキュリティと拡張性を重視する大企業向け
1. Google Cloud Vertex AI Agent Builder
- 特徴: Googleの強力な検索技術を基盤としており、ドキュメントだけでなくウェブサイトや非構造化データからも高精度な検索が可能です。
- 評価ポイント: Google Workspaceとの連携がスムーズ。検索品質の高さに定評があります。
- 料金: 従量課金制。詳細は要問い合わせ。
2. Amazon Bedrock ナレッジベース
- 特徴: AWS上で完結するセキュアな環境で、多様なLLM(Claude, Llamaなど)を選択してRAGを構築できます。
- 評価ポイント: 既存のAWS環境やS3にあるデータとシームレスに連携できる点が強みです。
- 料金: 従量課金制。詳細は要問い合わせ。
3. Azure AI Search
- 特徴: Microsoft 365やSharePoint内のドキュメントとの親和性が非常に高く、社内ナレッジ検索の用途で絶大な効果を発揮します。
- 評価ポイント: 企業の既存資産を最も活かしやすい選択肢の一つです。
- 料金: 従量課金制。詳細は要問い合わせ。
【タイプ②】ノーコード/ローコード特化型ツール
特定のAIアプリを迅速に構築したい事業部門向け
4. Dify
- 特徴: 直感的なGUIでRAGアプリを構築できるオープンソースベースのプラットフォーム。チャットボットや社内ツールなどを迅速にプロトタイピングできます。
- 評価ポイント: 無料から始められ、クラウド版と自社サーバーに設置するセルフホスト版を選べる柔軟性が魅力です。
- 料金: 無料プランあり。Proプランは$59/月から。
【タイプ③】導入支援・SIerサービス
AI導入を専門家に丸ごと任せたい企業向け
5. ソフトバンク TASUKI Annotation
- 特徴: RAGの精度を左右する「データの品質」に特化したサービス。AIが読み込みやすいように、既存のドキュメントを構造化(アノテーション)する作業を専門家が代行します。
- 評価ポイント: 「AIに何を学習させれば良いかわからない」という導入初期の課題を解決してくれます。
- 料金: アノテーション代行サービスは25万円~。
6. リコーのデジタルバディ
- 特徴: 複合機やドキュメント管理でオフィス業務を知り尽くしたリコーが提供する、業務特化型のRAGソリューション。部門や用途ごとに最適なAIアシスタントを構築します。
- 評価ポイント: ユーザーごとのアクセス権限制御など、日本企業のニーズに合わせたセキュリティ機能が充実しています。
- 料金: 詳細は要問い合わせ。
7. クラスメソッド RAG導入支援パッケージ
- 特徴: AWSやAzureなど主要クラウドの知見が豊富なクラスメソッドが、企業の要件に合わせて最適なクラウド上でRAG環境を構築するサービスです。
- 評価ポイント: 最短2週間というスピーディーな導入が可能で、技術的な知見を活かしたカスタマイズ性の高さが強みです。
- 料金: 詳細は要問い合わせ。
RAG構築サービス選定の4つの重要ポイント
最適なサービスを選ぶために、以下の4つの質問を自社に問いかけてみましょう。
- どのタイプのサービスが自社に合うか? IT部門が主導できるなら「タイプ①」、事業部門で素早く始めたいなら「タイプ②」、専門家不在で丸ごと任せたいなら「タイプ③」が基本方針となります。
- AIに読み込ませたいデータはどこにあるか? データが既に特定のクラウド(Azure, AWSなど)に集約されている場合、同じプラットフォームのサービス(タイプ①)を選ぶと連携がスムーズです。データが紙や様々な形式で散在している場合は、データ整備から支援してくれる「タイプ③」が適しています。
- セキュリティ要件はどのレベルか? 機密情報を扱う場合、閉域網接続や厳格なアクセス権限管理が可能な「タイプ①」や「タイプ③」のエンタープライズ向けサービスが必須となります。
- 導入後の運用は誰が担当するか? 社内に運用担当者を置けるか、それとも保守・運用も外部に委託したいかによって、選ぶべきサービス(特にタイプ③のマネージドサービスの有無)が変わってきます。
まとめ
RAGは、もはやAI専門家だけのものではありません。今回ご紹介した様々なサービスを活用することで、あらゆる企業が自社の情報資産を最大限に活かし、業務効率化や新たな価値創造を実現できます。
最も重要なのは、いきなり高機能なものを目指すのではなく、まずは自社の課題、リソース、ITリテラシーに合ったタイプのサービスを選定することです。この記事を参考に、自社にとって最適なRAG導入の第一歩を踏み出してください。