はじめに
時系列分析は、時間軸に沿ってデータの変動やパターンを解明し、未来予測や異常検知などに活用される手法です。例えば、気温の変動や売上推移の分析を通じて、季節性や長期トレンド、ランダムな変動の背景を理解することが可能です。
この記事では、時系列分析の理論的な背景とPythonを用いた実装例を、初心者にもわかりやすく丁寧に解説します。
理論背景と基本概念
時系列分析では、以下の3つの主要な構成要素を理解することが重要です。
- トレンド(Trend)
長期的な上昇・下降傾向。
例:地球温暖化による気温の上昇 - 季節性(Seasonality)
年間、月間、日々の周期性。
例:夏季に冷房需要が高まる現象 - 残差(Residual)
予測が困難なランダムな変動。
例:突発的な天候変化や異常値
また、実際の分析ではデータの「定常性(stationarity)」の確認が必須です。定常性が成り立たない場合、データ変換(対数変換や差分を取るなど)を行い、安定した統計的性質を持たせる必要があります。
実装例とコード解説
下記のコードは、過去10年間の東京の月別平均気温データを用いて、時系列の変化を視覚化する例です。コード内のコメントも交えながら解説します。
※データは、「国土交通省の気象オープンデータ」などから取得してみてください。
# Google Colabで実施する場合
!pip install japanize-matplotlib
import pandas as pd
import numpy as np
# 年月と気温のデータを作成
dates = pd.to_datetime([f'{year}-{month}-01' for year in range(2013, 2024) for month in range(1, 13)])
temperatures = np.random.uniform(5, 25, len(dates)) + np.sin(np.linspace(0, 10 * np.pi, len(dates))) * 10 # 周期的な変動を加える
# DataFrameを作成
temp_data = pd.DataFrame({'日付': dates, '気温': temperatures})
# 月ごとの平均気温を算出
temp_data_monthly = temp_data.groupby(pd.Grouper(key='日付', freq='M'))['気温'].mean().reset_index()
# 結果を確認
print(temp_data_monthly.head())
# グラフを描画
import matplotlib.pyplot as plt
import japanize_matplotlib
plt.figure(figsize=(10,6))
plt.plot(temp_data_monthly['日付'], temp_data_monthly['気温'], color='skyblue')
plt.title('東京の月別平均気温推移(2013-2023年)')
plt.xlabel('年')
plt.ylabel('気温(℃)')
plt.grid(True)
plt.show()
- ポイント
- 実際の分析では、データの前処理(欠損値の補完や異常値の処理)も重要になります。
- グラフ化することで、視覚的にトレンドや季節性を確認できます。

応用と実務上の注意点
応用例:
- 気象予測、エネルギー消費予測、在庫管理など、時間変動する現象のモデリングに利用できます。
注意点:
- 突発的な自然災害など、説明変数に含めにくい要因への対応は難しい点があります。
- モデルの前提となるデータの定常性や周期性が守られているか、事前の検証が不可欠です。
まとめ
時系列分析は、長期傾向や周期性、偶発的な変動を把握するための強力なツールです。基本概念と実装手順を理解することで、日常の様々な現象をデータとして解析し、未来予測や異常検知に役立てることができます。まずはシンプルな例から手を動かし、徐々に高度な手法(ARIMAモデルや季節調整法など)に挑戦してみましょう。
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