『今日は“乗ってる”は本当か?——ホットハンドの誤謬の正体と「波」に呑まれない対処術

統計

TL;DR(30秒で要点)
連続成功の直後に「次も決まる」と感じるのがホットハンドの誤謬
賭博のような純粋確率:次の結果は独立 → 「熱」は錯覚
スポーツのような技能タスク:体調/自信/守備対応/難易度の変化で小さな“連続効果”が見えることも。ただし多くは錯覚と混在。
・対策はルール化・データ化・冷却。勢いだけで賭けや投資額を上げない。

はじめに

「3本連続で入った、今日は手が温まってる!」

——その“手応え”は、実力の向上? それとも錯覚?

バスケットで連続ヒット、トレードで連勝、ガチャで連続当たり…人は流れを信じたくなります。本稿は、ホットハンドの誤謬を直感→事例→実務対策の順で、読みやすく解きほぐします。

ホットハンドの誤謬とは?

定義:直前の成功が続いたとき、次の試行でも成功確率が上がると信じてしまう認知バイアス。コイン投げやルーレットのように各試行が独立な場面では誤りです。

典型例

  • バスケで3連続ヒット → 「次も入る」
  • ルーレットで赤が連続 → 「次も赤」
  • 投資が連勝 → 「今の自分は外さない」

近いけど別物:
ギャンブラーの誤謬は「黒が続いたから次は赤」と逆方向に考えるバイアス。
ホットハンドは「続く」と同方向に考えるバイアス。

「誤謬」だけでは語れない:スポーツで起きる“連続”

  • 技能の揺らぎ:体調・集中・疲労・シュートフォームの微調整で、同じ選手でもその日ごとに実力が上下します。
  • 心理効果:自信は意思決定のキレや躊躇の少なさに影響。
  • 環境・守備:連続で決めるとマークが厳しくなり、次の試行の難易度が変わる(=単純比較が難しい)。

このため、スポーツのデータでは“ごく小さな連続効果”が観測されることもあります。ただし、錯覚・選択バイアス・試行の難易度変化も混ざるため、過大評価しない姿勢が大切です。

ギャンブルでは“完全な誤謬”

  • ルーレット、サイコロ、スロットなどの独立試行では、過去の結果は次に影響しません。
  • 「今、波が来てる」は脳の物語。資金管理が崩壊しやすいシグナルです。

なぜ人は「続く」と感じるのか(錯覚のメカニズム)

  • パターン過感知:ランダム列にも規則を見いだしてしまう。
  • 平均への回帰の誤解:たまたまの好調は元の水準に戻りやすいのに、上振れが本質だと誤認。
  • 選択バイアス:好調時だけ記憶・観測に残りやすい(不調は忘れがち)。
  • 難易度の変化:守備強度やショット位置の変化を無視して「続いている」と解釈。

現場で使える対策プレイブック

スポーツ・業務の判断

  • プロセス指標で管理:シュート位置・ディフェンス距離・意思決定の質など、結果ではなく過程を追う。
  • ルーティン固定:好調/不調でも同じ儀式を維持し変動を平準化。
  • クールダウン・タイムアウト:連続成功後こそ一呼吸置く。

投資・課金・ギャンブル

  • 事前ルール:1回あたりのリスク上限(例:資金の1%)/日次ドローダウン停止ライン。
  • ロット固定:「勝っているから増やす」を禁止。増やすなら事前に条件化。
  • 冷却期間:連勝直後は強制休憩(5〜15分)を設ける。
  • ログ化:勝因/敗因を事前仮説と照合。勢い語りを排除。

神話と現実(1分でおさらい)

よくある思い込み現実チェック
「3本入った、次も入る確率は大幅UP」技能タスクで小さな上昇が見えることはあるが、多くは錯覚や難易度変化。過大評価に注意
「ルーレットで赤が続いた、今は熱い」独立試行。次の確率は同じ。波は脳内の物語。
「連勝中は賭け金を倍に」破滅確率が急上昇。リスク上限の固定が基本。

手を動かす:ミニ検証(Python)

# コイン投げ(独立試行)で「ホット」を検出できるか?
import numpy as np
np.random.seed(42)

n = 100000
p = 0.5
x = (np.random.rand(n) < p).astype(int)  # 1=成功

# 直前が成功のときの成功率と、失敗のときの成功率を比較
succ_after_succ = x[1:][x[:-1]==1].mean()
succ_after_fail = x[1:][x[:-1]==0].mean()
print(round(succ_after_succ,4), round(succ_after_fail,4))  # ≈ 0.5 と 0.5(差はノイズ)

# 連続成功が続くように“感じる”のは、人の知覚の偏り

まとめ

  • ホットハンドの誤謬:連続成功の後も成功が続くと感じるバイアス。
  • 賭博では完全に誤謬、スポーツでは小さな連続効果が混ざることも。ただし過大解釈は禁物。
  • 対処はルール化・データ化・冷却。勢い任せの意思決定をブロックしよう。

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