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【初心者向け完全解説】Llama 4 Scoutとは?特徴・仕組み・使い方

AI

はじめに

 2025年4月5日、Meta社が最新の大規模言語モデル「Llama 4」シリーズを発表しました。本記事では、そのうちの一つである「Llama 4 Scout」について、AI初学者でも理解できるようにわかりやすく解説します。モデルの特徴から実際の使い方まで、順を追って説明していきます。

1. Llama 4 Scoutとは

 Llama 4 Scoutは、Meta社(旧Facebook)が開発した最新の大規模言語モデル(LLM)で、2025年4月5日にリリースされました。このモデルは、テキストだけでなく画像も理解できる「マルチモーダル」なAIモデルです。

1.1 Llamaシリーズにおける位置づけ

Meta社は「Llama 4」シリーズとして、以下の3つのモデルを発表しました:

  • Llama 4 Scout – 16人のエキスパートを擁する17Bアクティブパラメータモデル(本記事の主題)
  • Llama 4 Maverick – 128人のエキスパートを擁する17Bアクティブパラメータモデル
  • Llama 4 Behemoth – 16人のエキスパートを擁する288Bアクティブパラメータモデル(現在も開発中)

 Scoutは、これらの中で最も軽量なモデルですが、それでいて非常に高い性能を持っています。特に、単一のGPUでも動作する設計になっているため、個人や小規模な組織でも比較的容易に利用できる点が大きな特徴です。

ポイント: Llama 4 Scoutは、Llama 4シリーズの中で「効率性」と「長文理解能力」に特化したモデルです。

2. Llama 4 Scoutの主要な特徴

マルチモーダル能力

 テキストだけでなく画像も理解できる「ネイティブマルチモーダル」設計。画像についての質問に答えたり、画像を分析したりできます。

超長文コンテキスト

 業界最長クラスの1000万トークン(本約100冊分!)のコンテキストウィンドウをサポート。

高効率アーキテクチャ

 MoE(Mixture of Experts)技術により、総パラメータ数109Bながら、実際に使用するのは17Bのみ。

単一GPU対応

I NT4量子化により、NVIDIA H100 GPU 1枚での動作が可能。

2.1 ネイティブマルチモーダル機能

 Llama 4 Scoutの最大の特徴の一つが、テキストと画像を同時に理解する「ネイティブマルチモーダル」機能です。この機能は「早期融合(early fusion)」と呼ばれる技術によって実現されています。

 従来のAIモデルでは、テキストと画像を別々に処理した後で統合する「後期融合」が一般的でしたが、Llama 4 Scoutでは最初からテキストと画像のデータを一緒に学習させています。これにより、人間が目と耳からの情報を自然に統合するように、AIもテキストと画像の関連性をより深く理解できるようになりました。

2.2 圧倒的な長文コンテキスト処理

 Llama 4 Scoutは、最大1000万トークン(約本100冊分)という業界最長クラスのコンテキストウィンドウをサポートしています。これは、以前のモデルの128Kトークンから大幅に拡張されました。

この超長文コンテキスト機能により、次のようなことが可能になります:

  • 非常に長い文書の要約や分析
  • 複数の文書を同時に参照しながらの質問応答
  • 膨大なコードベースの理解と修正提案
  • 長期的な会話履歴を記憶した対話

2.3 MoEアーキテクチャによる高効率化

 Llama 4 Scoutは「MoE(Mixture of Experts)」と呼ばれる革新的なアーキテクチャを採用しています。これは「専門家の混合」という意味で、AIの中に複数の「専門家」(エキスパート)を持たせる仕組みです。

 従来のモデルでは全てのパラメータを常に使用していましたが、MoEモデルでは入力に応じて最適なエキスパートだけを活性化させます。Llama 4 Scoutの場合、16人のエキスパートを持ち、総パラメータ数は109Bですが、実際に計算に使われるのは17Bのアクティブパラメータのみです。

これにより:

  • 少ない計算リソースで高い性能を実現
  • 推論速度の向上
  • 電力効率の大幅な改善

 つまり、大規模なAIモデルの「賢さ」を維持しながら、コンパクトなモデルの「効率性」も兼ね備えているのです。

3. 技術的な詳細

3.1 モデルスペック

項目詳細アクティブパラメータ数17B(170億)エキスパート数16総パラメータ数109B(1090億)コンテキスト長10M(1000万トークン)入力モダリティ多言語テキスト、画像出力モダリティ多言語テキスト、コード対応言語アラビア語、英語、フランス語、ドイツ語、ヒンディー語、インドネシア語、イタリア語、ポルトガル語、スペイン語、タガログ語、タイ語、ベトナム語(公式サポート)トレーニングデータ量約40兆トークン知識カットオフ日2024年8月

3.2 iRoPEアーキテクチャと長文処理能力

 Llama 4 Scoutが1000万トークンという超長文コンテキストを扱える秘密は、「iRoPE」と呼ばれる新しいアーキテクチャにあります。これは「interleaved Rotary Position Embeddings」の略で、以下の特徴があります:

  • 位置埋め込みのないインターリーブ(交互)配置の注意層
  • 推論時の温度スケーリングによる注意力の調整
  • 256Kコンテキスト長でのプレトレーニングと微調整

 これにより、モデルは非常に長いテキストの中でも文脈を理解し、遠く離れた情報同士の関連性を見出すことができます。

3.3 ベンチマーク性能

Llama 4 Scoutは、同クラスのモデルと比較して優れた性能を示しています:

  • 推論・知識: MMLU Pro 74.3、GPQA Diamond 57.2
  • 画像理解: MMMU 69.4、MathVista 70.7
  • コーディング: LiveCodeBench 32.8
  • 多言語: MGSM 90.6

 特筆すべきは、これらの性能が単一GPUで動作可能なサイズのモデルから得られている点です。Llama 4 Scoutは、Gemma 3、Gemini 2.0 Flash-Lite、Mistral 3.1といった同クラスのモデルを多くのベンチマークで上回っています。

4. Llama 4 Scoutの使い方

4.1 基本的な導入方法

Llama 4 Scoutを使用するには、いくつかの方法があります:

4.1.1 Hugging Faceを使用する方法

Transformersライブラリを使用すると、比較的簡単にLlama 4 Scoutを導入できます:

python# Transformers v4.51.0以上が必要
pip install -U transformers

# Pythonコード例
from transformers import pipeline
import torch

model_id = "meta-llama/Llama-4-Scout-17B-16E"

pipe = pipeline(
    "text-generation",
    model=model_id,
    device_map="auto",
    torch_dtype=torch.bfloat16,
)

output = pipe("こんにちは、Llama 4について教えてください。", max_new_tokens=200)
print(output)

4.1.2 クラウドサービスを利用する方法

以下のようなクラウドサービスを通じてLlama 4 Scoutを利用することもできます:

  • AWS(Amazon Web Services)
  • Azure(Microsoft)
  • Google Cloud
  • Hugging Face
  • Cloudflare Workers AI
  • OpenRouter

これらのプラットフォームでは、APIを通じて簡単にLlama 4 Scoutを利用できます。

4.2 効果的なプロンプトの書き方

Llama 4 Scoutに指示を出す際の基本的なフォーマットは以下の通りです:

<|begin_of_text|><|header_start|>system<|header_end|>
あなたは親切なアシスタントです。日本語で応答してください。
<|eot|><|header_start|>user<|header_end|>
こんにちは、Llama 4 Scoutの特徴を3つ教えてください。
<|eot|><|header_start|>assistant<|header_end|>

効果的なプロンプトを書くためのポイント:

  1. 明確な指示: 何を求めているのか具体的に指示する
  2. システムプロンプトの活用: モデルの振る舞いを制御するためのシステムプロンプトを設定する
  3. 段階的な指示: 複雑なタスクは複数のステップに分ける
  4. 出力フォーマットの指定: 欲しい形式を明確に指定する

4.3 画像と組み合わせた使用例

Llama 4 Scoutはマルチモーダルなので、テキストと画像を組み合わせた使い方が可能です:

python# 画像とテキストを組み合わせた例
from transformers import AutoProcessor, Llama4ForConditionalGeneration
import torch
from PIL import Image
import requests

# モデルとプロセッサの読み込み
model_id = "meta-llama/Llama-4-Scout-17B-16E-Instruct"
processor = AutoProcessor.from_pretrained(model_id)
model = Llama4ForConditionalGeneration.from_pretrained(
    model_id, 
    device_map="auto", 
    torch_dtype=torch.bfloat16
)

# 画像の読み込み
image_url = "https://example.com/sample_image.jpg"
image = Image.open(requests.get(image_url, stream=True).raw)

# テキストと画像を組み合わせたメッセージ
messages = [
    {"role": "system", "content": "あなたは画像分析が得意なアシスタントです。日本語で応答してください。"},
    {"role": "user", "content": [
        {"type": "text", "text": "この画像について詳しく説明してください。"},
        {"type": "image", "image": image}
    ]}
]

# プロンプト処理
inputs = processor.apply_chat_template(
    messages, 
    add_generation_prompt=True, 
    return_tensors="pt"
).to(model.device)

# 応答生成
outputs = model.generate(
    inputs["input_ids"], 
    max_new_tokens=500
)

# デコードして表示
response = processor.decode(outputs[0, inputs["input_ids"].shape[1]:], skip_special_tokens=True)
print(response)

注意点: 現在、Llama 4の画像処理機能は最大5枚までの画像を扱うことができます。ただし、実際のアプリケーションでは、画像の解像度や複雑さによってパフォーマンスが変わる可能性があります。

5. Llama 4 Scoutのライセンスと制限

5.1 Llama 4 Community License

 Llama 4 Scoutは、「Llama 4 Community License」というカスタム商用ライセンスの下で提供されています。主な条件は以下の通りです:

  • 基本的な利用許可: 非独占的、世界的、譲渡不可、ロイヤリティフリーのライセンスでモデルを使用可能
  • 表示義務: 製品やサービスに「Built with Llama」と表示する必要がある
  • 派生モデル: Llamaを基にしたモデルを公開する場合、名前に「Llama」を含める必要がある
  • 大規模ユーザー制限: 月間アクティブユーザー数が7億人を超える場合は別途ライセンスが必要
  • 法令遵守: 適用法令とAcceptable Use Policyの遵守が必要

重要: ライセンスの詳細は常に変更される可能性があります。使用前に公式ライセンス文書を確認してください。

5.2 技術的・実用的な制限

Llama 4 Scoutには、以下のような技術的・実用的な制限があります:

  • 知識の制限: 2024年8月以降の情報は学習していない
  • 言語の制限: 12言語を正式サポート(プレトレーニングでは200言語が含まれているが、性能は言語によって異なる)
  • マルチモーダル制限: 最大5枚の画像入力をサポート
  • ハルシネーション: 他のLLMと同様に、存在しない情報を作り出す可能性がある
  • ハードウェア要件: INT4量子化でも少なくとも16GB以上のVRAMを持つGPUが望ましい

6. 安全性と倫理的配慮

6.1 Meta社の安全戦略

Meta社はLlama 4モデルの安全性を確保するために、「3本柱」の戦略を採用しています:

  1. 開発者支援: 安全で柔軟な体験構築をサポートするガイドラインやツールの提供
  2. 悪用からの保護: 悪意ある利用を防ぐためのモデル強化と保護機能の実装
  3. コミュニティ保護: ライセンスや連携による誤用防止

6.2 システムレベルの保護ツール

Meta社は以下のような保護ツールを提供しています:

  • Llama Guard: 入力と出力の両方を監視し、有害コンテンツをフィルタリングするモデル
  • Prompt Guard: プロンプトインジェクション攻撃を検知・防御するツール
  • Code Shield: 生成されたコードの脆弱性を検出するツール

これらのツールはPurpleLlamaリポジトリで公開されており、Llama 4アプリケーションへの組み込みが推奨されています。

6.3 開発者の責任

Llama 4 Scoutを使用する開発者には、以下のような責任があります:

  • アプリケーション固有の安全性テストとチューニングの実施
  • 適切なガードレールの実装
  • ユーザーへの透明な情報提供
  • 継続的なモニタリングと改善
  • 法令とライセンス条件の遵守

注意: Llama 4 Scoutは強力なツールですが、その出力を無批判に信頼するべきではありません。特に重要な意思決定や敏感な情報に関する用途では、適切な検証と人間の監督が必要です。

7. まとめと今後の展望

 Llama 4 Scoutは、効率性と性能を両立させた画期的なAIモデルです。マルチモーダル機能、超長文処理能力、そして単一GPUでの動作可能性は、個人開発者から企業まで幅広いユーザーにとって大きなメリットとなるでしょう。
 Databricksでも扱えるのですが、高精度でレスポンスが異常に早いため、本当に考えているのかなといった驚きがありました。

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